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学習者中心の教育とは、学習過程の中心に学生を据え、積極的な参加と関与および自律性を重視することを目的とするものです。学生の興味やニーズ、能力に応じた授業は、学生の内発的動機付けにつながります。また、動機付けされた学生は短絡的な解決策に陥る可能性が低いため、学生の興味や授業参加に特化した学習評価を設計することで、アカデミック・インテグリティ(学問における誠実性・公平性・一貫性)を保持することができます。そのような学びを実現するには教員は実際に何をすればいいのでしょうか?まず前編では、「学習者中心の教育」についてご紹介します。

学習者中心の教育とは何か?

学習者中心の教育とは、学習過程の中心に学生を据える教育アプローチです。従来の教員を中心としたモデルとは異なり、個々の学生のニーズと興味、能力に焦点を当てたものになります。学習者自身が自分の学びに主体的に関与し、責任をもち、積極的に意思決定を行うため、学生自身が、何を、なぜ、どのように学ぶのか選ぶことができます。

規範的な指導とは異なり、「学習者中心の教育は、学生がいる場所で、かれらが必要とするものを与えることであるが、それは、個々の学生のニーズに即した方法で行われる。学生自ら学びを管理し、自分のペースで学習を進め、もっとも適した方法で自分の知識を披露する力を、学生に与えることである。学区内でこのような個別最適な学習を実現する方法は多岐に渡る」 (Harrington & DeBruler, 2019)と言われています。

そのため、学習者中心の教育の主要原則はさまざまで、その数も3つの場合もあれば、13個にのぼることもあり、現時点ではその原則の決定的なリストはありません。例えば、米国の教育省は「個別化、相互作用、統合」の3つを挙げていますし、グリーンとハリントンの研究では、「声、選択、能力に基づいた進行、学生のニーズの継続的なモニタリング」の4つが挙げられています(Green & Harrington, 2020)。また、ポール・ラムズデンは13個の原則を提示しています(Ramsden, 2003)。

学習者中心の教育に関する研究で有名なメルリン・ワイマー氏は、学習者中心の教育について次の7つの原則を挙げています。

  1. 教員は、もっと多くの学習課題を学生に取り組ませること。つまり、「要約」や「結論の導出」、「難解な箇所の指摘」といった課題を課す。
  2. 教員は教える回数を減らすこと。つまり、質問上手になるということ。
  3. 教員は指導計画をもっと入念に練ること。学生が関連する教材で認知スキルを応用できるような授業内課題を作成する。
  4. 全教員が、専門家の学習方法についてのモデルを明示的に示すこと。学生からの予期せぬ質問に答えるとき、自分の学習過程や思考のプロセスを積極的に学生と共有する。
  5. 全教員が、学生同士の学び合いを奨励すること。
  6. 全教員と学生が、学びのための環境作りに取り組むこと。これは抽象的なことではなく、例えば、学生が自らの学習に責任をもてるよう、選択肢を学生に与えるということ。
  7. 全教員が学びを促進するために学習評価を活用すること。議論の出発点として、学生同士の相互評価やフィードバックを活用する。(Weimer, Learner-centered teaching: Five key changes to practice, 2002

次に、カルガリー大学が複数の情報源にもとづいてまとめた主要原則を紹介します。

  1. 学習者の積極的な関与
    刺激的かつ効果的な、興味を喚起する学習教材を用意し、それを分かりやすく説明すること。学生が自主的に深く学習に取り組めるよう、さまざまな指導法を用いるとともに、変わりゆく教育環境に合わせた指導法を模索する。
  2. 情熱、共感、敬意の表明
    学生の意見や不安に興味を示し、学生の多様な才能やニーズ、予備知識、学習方法を理解しようと努めること。教員と学生間のやりとりを活性化し、専門分野への情熱を共有する。
  3. 明確な期待値の伝達
    期待する学習成果とパフォーマンス水準を明確に伝えること。授業の目標や構成、構造を伝える。
  4. 学生の自律の奨励
    学生が個人的な興味をもち、発展させる機会を提供すること。学習過程や評価方法について選択肢を与え、学習に関するタイムリーで発展的なフィードバックを提供する。メタ認知により、学生自らが自己の学びを評価できるよう支援する。
  5. 教え、学ぶコミュニティの構築
    相互の学び合いを奨励し、授業に参加する全員が、思慮深く敬意をもって、協力して授業活動や対話に取り組めるような指導法や学習ストラテジーを活用する。
  6. 適切な学習評価の活用
    意図された授業目標に合致した評価方法を用いること。評価基準を示し、深い学びを重視し、学習評価を足がかりとして学びを進展させる。
  7. 継続的な改善に向けた取り組み
    指導に関する形成的なフィードバックと総括的なフィードバックを集めること。自己を批判的に振り返り、教育についての学術文献を調べ、自分の指導実践を強化するための明確な目標を特定する。(University of Calgary, retrieved July 11, 2023

これらのリストは具体的な内容こそ異なるものの、どれも、教員が学習者の個性を認め、一人一人が違う人格であることを理解するよう求めています。

「学生中心」と「学習者中心」に違いはあるのか?

メルリン・ワイマー氏は次のように説明します。「学生中心と言うと、学生のニーズに焦点を当てていることを暗示する。それは、教育を製品として捉え、学生が顧客で、教員の役割は顧客に奉仕し、満足させるものであるかのようなイメージを喚起する……学習者中心とは、学習に真っ向から注目することである。つまり、学生が何を学んでいるのか、どのように学んでいるのか、学習環境、学生が学びを維持し、応用しているか、現在の学習が、将来の学生の学びにどのような影響を与えるのかに注目することだ……学習者中心の教育は、(教員でなく)学生が何をしているのかに焦点を当てる」(Metropolitan State University of Denver

教員として指導するなかで「学生中心の教育」と「学習者中心の教育」の微妙な違いに留意することが大切です。とは言え、多くの人がこれら二つの語句を同じ意味で使用しています。

学習者中心の教育とは具体的にどのようなものか?

TEALと米国教育省は次のように説明します。「これまでの最高の授業を覚えていますか? もっとも自信をもてた授業は? もっとも多くのことを学んだ授業は? おそらくそれは、あなたに新たな知識を与え、教員と、自分自身の好奇心のおかげで、学習意欲が高まった授業でしょう。学習者中心の授業は、モチベーションを高め、努力を引き出すことで学習を促進します」学習者中心の学習環境は、学習とは楽しいものであるという精神を体現しています。

学習者中心の教育を実現するには多くの方法がありますが、このアプローチには以下のような特徴があります。

  1. 主体的な参加
    学生は、実践的な活動や議論、課題解決を通して、自分の学習プロセスに能動的に関与する。探索や探究を通して自分の力で知識を身につけることが奨励される。
  2. 個別化
    それぞれの学生のニーズや興味、能力に合わせて学習がカスタマイズされる。学生が自分のペースで学習を進め、興味のある分野を掘り下げられるように、個に応じた指導がなされる。
  3. 協働
    学生は、学生同士の交流やコミュニケーション、チームワーク、協働が奨励される。協働的な学習は社会スキルや批判的思考力、集団内で効果的に取り組む能力を促進する。
  4. 探究とクリティカル・シンキング(批判的思考力)
    学生は質問し、批判的に考え、情報を分析することが奨励される。エビデンスを評価し、課題を解決し、情報に基づいた決断をくだす方法を学ぶ。能動的な探索と発見を促すために、探究をベースとした学習が実施されることが多い。
  5. オーセンティックで実世界に関連する文脈
    学習は、実世界での応用や現実的な課題と関連している。学生は自分の知識やスキルを実際的な状況で応用する機会を与えられるため、学習効果を高めて理解を深めることができる。
  6. 自己の振り返りとメタ認知
    学生は自己の学習を振り返り、客観的に認知するプロセスに取り組むため、自分の学習スタイルや長所、改善点に気づく。自己評価と自己管理の方略を身につけ、自分の学習の主導権をもつようになる。
  7. ファシリテーターとしての教員
    教員の役割は、講師や指導者から、ファシリテーターやガイドへと変わる。教員は、支援し、リソースを与え、学生が自ら学習をコントロールできるように導く。

学習者中心の教育は、個々の学生の独自性を認め、それぞれの長所や興味、学習の好みの違いを理解します。学生が裁量権をもって能動的に学習に取り組み、生涯にわたって学び続ける情熱を身につけられるよう、包括的な学習環境の構築を目指します。もし、今のカリキュラムの構成要素が教師中心か学習者中心か分からない場合は、「teachthought」が示す例と提案を参照することをお勧めします。

学習者中心の教育とブレンド型学習、オーセンティックな学び、個別最適な学び、カスタマイズ学習などの違いとは?

ブレンド型学習とは、学生の学びの一形態で、授業の目的に合わせて対面型の指導とオンライン学習を組み合わせたものです。オーセンティックな(真正な)学びとは、学生の興味を重視し、学習者にとって身近な実世界での課題を取り入れた教育概念です。ブレンド型学習や個別学習、カスタマイズ学習(自分のニーズに合わせて学習テーマをカスタマイズ)、オーセンティックな学びは、どれも学習者中心の教育を実現する指導方法であり、学習者中心の教育の下位概念でもあります。

個別最適な学びはカスタマイズ学習と同様に、学生自身と、かれらが学習のペースや方法に求めるものを中心に据えており、学生の個別のニーズを考慮します。

これらの概念はどれも、学習者中心の教育をつくり、支えるものです。ハリントン氏とデブルラー氏は「学習者中心の教育とは、個々の学生の違いを考慮しつつ、一人一人の望ましい成果に焦点を絞って、学校コミュニティのすべての側面(カリキュラム、教職員の配置、財政、テクノロジー、施設、スケジュール、地域の連携等)を調整するアプローチである。ブレンド学習と個別最適な学びは、学校や学区が学習者中心の教育環境をつくるために導入する可能性のあるモデルである」と述べています(Harrington & DeBruler, 2019)。

学習者中心の教育とは、学習過程のなかで、学生のニーズや関心、能動的な参加を優先する教育アプローチです。教員が知識の伝達のうえで中心的な役割を担う、従来の教員中心のアプローチとは異なり、学習者中心の教育では、学生に焦点を移し、学習評価やそれ以外の場での学生の自律性、批判的思考力、課題解決能力を重視します。学習者中心の学習は、協働を促し、コミュニケーション能力とクリティカル・シンキング(批判的思考力)の育成につながります。「学習者中心の評価」については後編でご紹介します。

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