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【11月2日 プレスリリース】AIライティングを検知する機能を搭載したiThenticateの最新版2.0を提供開始
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AIによる文章自動生成の脅威・責任・可能性 | ターンイットイン

The Turnitin Team
The Turnitin Team
Patti West-Smith
Patti West-Smith
20-year education veteran; Senior Director of Customer Engagement

2022年11月のOpenAIによるChatGPTがリリースされて以来、一般メディアはもちろん、教育に関する学術誌、出版物、 専門家など多くの教育関係者のあいだで、人工知能(AI)によるライティング支援が教育の未来にどのような影響を与えるのか議論されています。

多くの方々と同様、ターンイットインもその動向に目を光らせています。当社のティーチング・アンド・ラーニング・イノベーション(TLI) チームはベテランの教員のみで構成されていますが、各メンバーの見解は多岐にわたります。小論文の終焉を予想するものもいれば、 人間が書いた文章と機械の書いた文章を誰も識別できない世界を予測するものもいます。AIの脅威を深刻に捉えるべきという考えもあれば、 不可避の未来を受け入れるべきだと言う意見もあります。ひとつ言えることは、どれだけ確信に満ちた見識を披露されたとしても、 どちらが正しいのか、両方とも正しいのか、あるいはどちらも間違っているのかは、私たちにも分からないということです。

私たちに分かることは、授業のなかでAIによるライティング支援とAIによる文章の自動生成をどれだけ許容するか、 教員がリアルタイムで意志決定しなければならないだろうということです。今後の行方も分からず、すべての答えも出ないうちに「解決」 しなければならなくなるでしょう。それに不安を感じるかもしれませんが、教員はこれまでもさまざまな時代の変化のなかで、 変わらず重要なものを守り続けてきたのですから、今回の試練も乗り越えられるはずです。研究に基づいた健全なベストプラクティスを守り、新たな現実の詳細研究に時間を費やし、どのような実践がうまくいくのかを試していくことが必要です。 教員も進化し、互いに協力してフィードバックや助言を交換し、何か問題が起きたときには協力しあい、徐々に適応していくようになると思います。 ターンイットインは教員の皆様のパートナーとなり、現在のAIの脅威と責任、可能性に一緒に取り組んでいく用意ができています。

重要なのは、この議論を進めるうえで、課題を認識するだけでなくAIの可能性にも目を向けることです。 AIはそれ自体では良くも悪くもありません。多くのテクノロジーと同様に、私たちがそれをどう使うかにかかっているのです。教育に関して言うと、 それをどのように学生に使わせるか、という点も含まれます。 ここでは、 AIに関して心配される事柄、 教育者としての責任と今後の可能性について見ていきましょう。

脅威

どのような時代でも、教員は学生の知識と理解力、スキルを把握する必要があり、 教育機関は学生に与える資格の有効性を保証する必要があります。そのような基本枠組みを支えるのが学習評価です。学習評価には非公式な評価、 公式な評価、オーセンティック(真正な)評価、パフォーマンス評価、ポートフォリオ評価、形成的評価、総括的評価、大きな評価、小さな評価、 ハイステイクス・テスト、ローステイクス・テストなどが含まれます。そこで多くの教員が抱く疑問は、AIを前に、 どのように評価の信頼性を保証できるのか、ということです。学生の提出物が学生自身の手によるものか、 あるいはAIが自動生成したものかをどのように識別すればいいのでしょうか。

長年、アカデミック・インテグリティ分野を牽引するターンイットインに、 学生の成果物と学習評価の公正さを保証するのに役立つツールが当社にあるのかという質問が世界中の教育者たちから日々寄せられています。 その答えとしては、私たちは未来を見据えて、当社が開発している最新のAIライティング検知機能 (ChatGPTによる文章を認識する機能を含む)を製品に組み込み、2023年中には教育現場で使用できるよう、早急に取り組んでいます。 当社のAIイノベーション・ラボが急速に開発を進めているAI検知機能については、こちらの最新情報をご覧ください。

また、この進化するAI技術の影響について世間の議論が盛んになりはじめたのは最近のことかもしれませんが、この2年半の間、当社ではAIによるライティング支援の痕跡を認識するテクノロジーの研究と開発に取り組んできました。 しかし、この脅威に対処する答えとして、魔法の特効薬ひとつを頼りにするわけにはいきません。 時勢に合ったさまざまな解決策を協力してつくりあげていく必要があるでしょう。そのような解決策のいくつかはすでに教員の手元にあります。

事実、教員や教育機関がアカデミック・インテグリティの文化を築くために長年使いつづけてきた戦略は、 現在の新たな状況にも同じように使うことができます。意図的な盗用・剽窃や論文代行の脅威を解決するためにこれまで取り組んできた方針、 コミュニケーション、意識付け、信頼関係の構築、指導、形成的なフィードバックなど、信頼できる真の手法が役立つでしょう。

それ以外にも、AI文章自動生成ツールの悪用を防ぐ対策として実体験に基づいた出題など、 課題やテストの出題内容を工夫していくことも必要にです。当社の授業でAI生成文章に対処するためのガイド(英語のみ)には、 世界中の教育機関と教員がすぐに活用できる11の具体的なアドバイスを掲載していますのでご覧ください。

責任

現状がどれだけ不確かであろうとも、現代の教育における責任を負っているのは教員なのです。実際、その責任は複数あり、 時には互いに相反することもあるかもしれません。私たちの責任の1つは、学生が倫理的・道徳的な行動を学べるよう、手助けすることです。すでに、 すべてのAIによるライティング支援を禁止すべきだという人もいます。もう一つの責任は、 これらのツールの使い方を学生に理解させる必要があるということです。前述の意見とは正反対ですが、 今は世界中でライティングに対する概念が変わっているのだから、これらのツールを上手に活用していくためにも、 使い方を学生に理解させる必要があるという考えもあります。このような現実は未来にやってくるものではなく、すでに始まっています。

実際にYouTubeで検索してみると、AIによるライティング支援を用いて、 マーケティングや情報発信のコンテンツを大量に生成する動画が見つかります。 文章の一部がAIによって生成されたとの注意書きのある記事を見つけることもできます。このような変化がやって来ると、 教員はそれを無視することはできません。もし教員が無視してしまうと、学生は良くも悪くも自分の理解だけでギャップを埋めようとするからです。

これらの責任だけでも十分困難なことですが、さらに見逃すことのできない責任があります。「学び」に関することです。書くことは、考え、 学ぶための手段であり、教員にとってもっとも重要なことかもしれません。学校ではライティング課題を出すのをやめて「なにか別のこと」 をすべきだと主張する人々に対して、「書くこと」とは単に教員が学習評価をするための手段、学生が知識・理解力・ スキルを示すための手段ではないと理解してもらえるよう、教員たちが声をあげていかなければならないでしょう。

可能性

この新たなテクノロジーがどれほどの可能性を秘めているのか、まだ完全には把握することはできませんが、 すでに教員たちがどのような可能性があり得るのかを議論されているところもあります。真っ白な紙を目の前にすると無気力になってしまう 「白紙恐怖症」の克服や、学習障害の支援など、どうすればAIによるライティング支援を授業で活用できるのかアイデアを膨らませています。 ターンイットインのベテラン教員たちによると、学生が手本とすべき模範例を作成したり、文章校正ワークショップ用の素材原稿を作ったりするのに、 AIを活用できるという話が出てきているようです。また、 AIライティングツールが言語学習や一般的なブレインストーミングを支援するのに使えるという話も耳にします。間違いなく、 これからもアイデアが続々と出てくるでしょう。教員は、実験してみて、ときに失敗しつつもチャンスをつかまなくてはなりません。 学生のAIツール活用について研究に基づいた対応をするために、当社のAIに関する教員向けリソースをご覧ください。そのような過程すべてを通して、他の教員や学生、 すべての関係者と議論を重ねるべきです。

絶対に避けるべきことは、教員がその可能性から目を背けてしまうことです。未知なるものへの恐怖に背中を押され、 可能性に背を向けてしまってはいけません。とはいえ、AIによるライティング支援を、 あらゆる場面で安全策もなく使うことを急ぐよう提案しているのではありません。慎重になる必要がありますし、 それらのツールの使用を認めていない場合には、ツール使用を特定する手段をもっていなければなりません。しかし、 そのような安全策を実際に用意できれば、次はテクノロジーの新たな可能性に目を向けるときです。

まとめ

こうした「不安」と「安全性」は、言わばマズローの理論に通じるものがあります。テクノロジーの応用と革新について模索し始める前に、 教員はアカデミック・インテグリティに対する「安心感」を得る必要があります。 ターンイットインを支持してくださる方々や利用者からの話を聞くと、そのような安心感への欲求が世界共通であることが分かります。

前述のように、当社では、AIライティングの痕跡を教員が特定し、評価するのに役立つ実用的なソリューションを開発中です。 私たちは限られた時間のなかでできるだけ速く開発を進めています。
教員がAI に対して「不安」や「脅威」を抱いてしまうのは、準備不足や力不足を感じているからだと思います。 AI生成文章が教育や世界に与える影響を知るにはまだ学ぶべきことがたくさんあるのは事実かもしれませんが、 現時点で教育者が力を持っていないというのは真実ではありません。 生活や学習のなかでのこれらのツールに対する学生の考え方や理解を方向付ける役割として、教員以上に適した人はいるでしょうか? 誰が、 情報や分析を提供して学習におけるギャップを埋めるのでしょうか?議論や新たな理解を先導するのに、 教員以外にもっと良い適任者がいるでしょうか?
教員こそ、学生が新たなツールを倫理的かつ革新的に活用し始めるのを支援する役割を担っているのです。
これは常に教育者の役目であり、この先も変わらずに続いていくことでしょう。