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社会人の盗用・剽窃のニュースが報道され注目を集めると、次のような疑問をもちます。
その人のこれまでの教育歴のなかで、不正行為の先駆けとなるものがあったのだろうか?
学校でアカデミック・インテグリティを身につけていればそのような倫理違反を防げたのだろうか?

学生がアカデミック・インテグリティを実践するということは、成果物に盗用・剽窃をしないということ以上の意味をもちます。それは学校や大学での学習内容の習得を超え、本人の行動規範の核心にまで踏み込むものです。多くの研究で、教育を通して身につけた誠実性が倫理感と意思決定の枠組みをつくりだし、仕事への取り組み方や生き方全般を方向付けることが指摘されるようになりました。

教育機関はみずからの評判を賭けて、学生を卒業させること、つまり、学生にそれぞれの専攻分野で学位を与えることに説明責任を負います。卒業した学生が外の世界で大学の看板を背負うようになるので、その説明責任は学生の卒業後も続きます。

では、学生が誠実な人生をおくれるよう、教育者はどのようにアカデミック・インテグリティの種を植えればいいのでしょうか?

「学問上の誠実性」と「職業上の誠実性」の関係

近年、学問上の誠実性が職場での倫理的な行動に影響を与えるという研究が発表されました(Guerrero-Dib, J.G., Portales, L. & Heredia-Escorza, Y, 2020)。ゲレーロ・ディブらによるその研究では、中・高等学校で不正行為をした経験のある生徒は、大学や職場でも同じ行動を繰り返す可能性が高くなると仮定し、アンケート調査を行いました。不正行為の種類として、一般的なカンニング行為、データのねつ造、認められていない手段の活用、盗用・剽窃、引用元を示さない言い換え行為を調査しました。

その研究では、倫理観と自覚行動についてドナルド・マッケイブがデザインした質問紙を採用し、「これ(アカデミック・インテグリティ)を身につけることは、授業や大学生活を超えて、職場や個人生活の倫理的な行動パターンに影響を及ぼす」と結論づけました。「学術不正の行為を深刻に捉えている学生ほど、大学以外でも倫理的な行動をとる」ことが分かったのです。

つまり重要なのは、学術不正に対する認識が、職場での最終的な行動選択にいかに影響を与えるか、ということです。学生時代に形成された不正行為への態度は大人になっても変わらないことにくわえ、教師が不正行為の深刻さや影響に対して注意喚起や指導を行うと、学生は将来、その倫理観をもとにして、意思決定を行う可能性が高くなることも示されました。

学術不正が職業上の実践に与える影響について予備的調査を行ったハーディングらの研究でも、同様の結果が示されています(Harding, T.S,  Carpenter, D., Finelli C., & Passow, H.J)。ハーディングらは、フルタイムの仕事をもつ卒業間近の工学部生にアンケート調査を行いました。その結果、学術不正に関する意思決定のプロセスと、職場での非倫理的な行動に関する意思決定プロセスの間に、「実質的な共通点」があることが分かりました。「多くの学生は、高校から大学、職場へと環境が変わろうとも、逸脱行為への誘惑に駆られたとき同様の最終決定をくだす」のです。

教育者がすべきこと

これらの研究成果を得て、教員は学業と誠実性を保証するためにどのような取り組みをすればよいのでしょうか。アカデミック・インテグリティのための強固なプログラムづくりが重要であることは間違いありません。それが学生の誠実性とその社会的な影響に対処するための基礎となります。「正しい」こと(あるいは「間違っている」こと)への認識を高め、それを学生の意識に浸透させるには時間がかかりますが、前述した研究からも分かるとおり、一歩方向を間違えると取り返しのつかないマインドセットを植えつけることになります。

「社会人の倫理行動の一部は、学術不正の重大さやリスクに対する認識と相関がある。……学生に誠実さの重要性を説くだけでは不十分で、カンニングやごまかし行為が困難となる環境を築くことも必須である」とゲレーロ・ディブらは強調します。つまり、学生が盗用・剽窃の発覚から逃れることができ、とがめられることもなければ、かれらは単位取得や卒業という「報酬」を得て、不正行為や手っ取り早い抜け道を当たり前の手段とするのです。

不正行為の発見という点では、教員が手作業で、自分たちの力だけですべての不正行為を捕捉するなど非現実的です。経験上、時間の不足と、不正行為の決定的な証拠の不足(とくに、第三者による論文代行が疑われる場合)が最大の課題です。アカデミック・インテグリティのプログラムは、その概念を学生に理解させることが基礎となりますが、学生がその概念をみずからの学習に体系的に組み込んで、直感的に実践できるよう、テクノロジーとソフトウェアの活用も必要です。その第一歩として、たとえば、文章の類似性を検知するソフトウェアを使用すれば、盗用・剽窃(不注意によるものでも、意図的なものでも)に気づくことができます。提出物の盗用・剽窃を監督できるので教員には待望の機能でしょう。もう一方で、学生にとっても、自分で気づいて文章を修正することで学術不正の要素をなくし、発展的な学習に集中することができます。

オーストラリア政府のOffice for Learning and Teaching(OLT)が委託した2015年の調査研究では、オーストラリア国内におけるアカデミック・インテグリティの文化と実践について調べた結果、高等教育機関に在籍する学生は、アカデミック・インテグリティについて学ぶうえで、従来型の手法よりも双方向型のオンライン・リソースに高い関心を示す傾向があることが示されました。他にも、情報系のアプリや、授業内でのエクササイズ、オリエンテーション・セミナーが好まれています。さらに、調査に参加した学生は、アカデミック・インテグリティについて理論的によく理解しているが、その概念を応用する機会がもっと増えるよう望んでいることが分かりました。前述したような盗用・剽窃の注目事例を授業のなかで共有すると、「重要でない」と思われるような学生時代の不正行為が、個人の評判を脅かす一生涯の行動パターンへと変わってしまうことを効果的に説明できるでしょう。

倫理性に対する早期の取り組み

International Center for Academic Integrityによると、アカデミック・インテグリティとは、「たとえ困難な状況におかれても、正直・信頼・公正・敬意・責任・勇気という6つの基本的な価値観を全うすること」です。この定義は、アカデミック・インテグリティを教育機関と関連付けて学生や教員の役割を特定するのではなく、個人、あるいは社会人としての核となる資質として論じている点に注目しましょう。反響や懲戒処分への不安はアカデミック・インテグリティを支える重要な柱となりますが、より良い人生へ向けた学生の意欲や願望という、積極的な姿勢からもアカデミック・インテグリティが生まれるはずです。大学の価値観や期待に沿ってアカデミック・インテグリティの指針を文書に正式に記し、さらには、それが学内のポリシーや行動規範以上のものになるよう努力しましょう。卒業後の人生にも影響を及ぼす価値観のなかにアカデミック・インテグリティを根付かせること、「倫理規範」の要素を強調することで、学生の自覚を高められるでしょう。

アカデミック・インテグリティ研究の重鎮であるD.マッケイブとL.K. トレビノによる研究で、倫理規定が学生の不正行為を減らすのに効果的であるが、それは不正行為を糾弾する周囲の環境がある場合に限られることが示されています。将来の仕事を想像して、アカデミック・インテグリティが職場での不正行為につながることを理解するのは学生にとって難しいかもしれませんが、独自の学びを一定レベル保証することは可能です。クラスメイト(あるいは将来、同じ職種に就くかもしれない仲間)に対して自分の学習の説明責任をもたせれば、自分の行動を自覚し、責任感を強める良い機会となります。これはピアレビューやグループワークのかたちで取り入れられます。実際の職場は、個人作業よりもチームの協働が中心となり、互いの仕事ぶりを見る機会が多いものです。グループワークを通して効果的に疑似体験させましょう。

意図的な不正行為にはさまざまな要素が複雑に絡み合っていますが、学生が自らを「誠実な人」と見なす文化を築けば、アカデミック・インテグリティ、ひいては職業上の誠実性がより容易に根付き、損なわれにくくなるでしょう。私たちの良心を揺さぶる事例についてもう一度考えてみると、マッケイブらのこの言葉が最もよく言い表しているでしょう「誠実な文化を築くことの最大の利点は、学生の不正行為が軽減されることではない。信頼できる共同体のなかで生きることの価値を身につけるという、一生涯の恩恵を得られることだろう」


アジア太平洋地域でのアカデミック・インテグリティへの取り組みについては、ビデオキャストIntegrity Mattersもご覧ください。

APACビデオキャスト Integrity Matters [ 英語のみ ]